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海外ドラマの感想ブログです。たまに脱線します。

【邦画】ドライブ・マイ・カー

 

せっかくアマプラ申込中なので見よう見ようと思いつつ、なんだか面倒で後回しになっていた作品。

見始めるまでは面倒でしたが、だんだん面白くなってきて最後は夢中になって見ました。

 

あまり賞と絡めたくはありませんが、やはりアカデミー4部門にノミネートされ、国際長編映画を受賞した作品ということで、他の村上作品から作られた映画とは少し違うように思います。簡単に言うと、マニアックすぎるものを好まない人にも理解しやすい。

村上作品からの映画は過去にいくつか見たことがありますが、難解…というか、別に理解されることを求めていない雰囲気があります。そこが良いわけでもあるわけですが、このドライブ・マイ・カーはそんな雰囲気を残しつつも、村上作品に傾倒しているわけでもない人にもわかりやすい、そんな映画かと思いました。

 

原作はチョイ長めの短編で、主人公、家福の心理描写が多数。2時間の映画に仕立てるにはエピソードを足さないといけないけどどうするんだろう、と思っていたら、ドライブ・マイ・カーの入っている短編集、「女のいない男たち」の別の作品の内容が取り入れられていたり、村上作品でよく言及されるロシア文学の中から、「ワーニャ伯父さん」が、ガッツリとベースに織り交ぜられていたりします。それらが村上作品の雰囲気を損なわないのは、まぁ納得かと思います。

 

今回私が注目したのは、(私の記憶が正しければ)まったく村上作品には登場しないエピソードや、ロケ地のチョイスが多数あり、それらの最終判断はおそらく濱口監督によるものであろうと想像しますが、それらも「村上ワールド」にしっくりと馴染むとともに、映画として見やすさに貢献しているという点です。

 

ここからはネタバレとなりますが、

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原作では雇い主である家福と、雇われた側のドライバー・みさきの主従関係が変化することはありませんが、映画では、最後には完全に同等、むしろ家福がみさきに癒されていく様子が明らかで、それは20歳そこそこにも関わらず、みさきが辿ってきた過酷な生い立ちが映画ではかなりたくさん語られるためであります。

 

また、原作での高槻は家福から見て薄っぺらな人物として描かれていますが、映画ではなかなかどうして闇の深い人物で、ダンス・ダンス・ダンスの五反田君を彷彿とさせる。むしろ家福の方がまっとうに正気を保っている。

闇の深さと言えば家福の妻・音は闇に絡めとられてしまった人物に思える。

そして、過酷な環境にありながら闇落ちしていないみさきが、家福を導いてさえいるように、私には思えました。

この映画には完璧な「善」の象徴とも言うべき夫妻が登場します。最後にみさきが夫妻の犬を譲り受け(もしかしたら犬種が一緒なだけかもしれませんけど)、夫妻にゆかりの地で地元に根付いたような形で買い物をする、家福の車がある、女性っぽさを排除したようなスタイルから、髪を下ろし、顔の傷も治したように見える、などなどは、視聴者に今後の展開を想像させるオープンエンドになっています。

 

原作は特にオチがないままふっつりと切れたように終わるのですが、映画としてのドライブ・マイ・カーは原作の雰囲気を残しつつ、良い感じに仕上がっていると感じました。