あまり良くなかった、みたいなレビューを書いてしまったような気がするこの映画、決して良くなかったわけじゃないです。というか、むしろ後からじわじわと価値がわかってくる映画。
ただやはり暗い雰囲気+流血系は苦手なので、もう一度観る気はしないのですが、世界観は楽しみたい…というわけで、翌日は考察動画をいくつか見ました。こういう楽しみ方ができる映画は久しぶりです。
まず最後までモヤモヤが残った石の意味。考察動画の王道は、
石=学歴の象徴
なのですが、私は、石はただの石って思いました。ほら、パワーストーンにハマる人っているじゃないですか、長男・ギウはただの石に有難がって盲目状態になっている。終盤で石は凶器になる。ラストは川に返す。どのように見るかによってパワーストーンにもなるし、凶器にもなるけど、石はただの石であって、何の意味もないように思いました。人間が勝手に意味づけしているだけなので、学歴の象徴とするのもまた違う気がする。序盤で半地下のおかーちゃんが「なんだ石か…食えるもん持ってこいよ」みたいな顔をするのですが、(もしかしたら言葉に出していたかも)それが一番しっくりきました。
ちなみに、どこかの外国の作家が「物語に銃が出てきたら、それは必ず発射されなければならない」と書いているそうですが(by 村上春樹)、鈍器になりそうな石が出てきたらそれは必ず凶器として使用されなければならないって思いましたw 最初っから凶器として使われそうな雰囲気出してる石ですよね。
この映画の総括的な印象は、「妙な気分にさせられる映画」です。
死活に関わるから仕方なくやっつけ合ってる二人だけど、実は境遇が酷似していて、出会い方が違っていたら親友になれたかもしれない「半地下のとーちゃん」と「地下室男」。
脳手術の後、ちょっとオカシくなっちゃって、笑ってはいけない場面で笑ってしまうギウ。
浸水した家の中でマジやばいぐらい水位が上がった家の中でタバコを吸う娘・ギジョン。
いまわの瀬戸際なのに、自分を階段から蹴りおとした相手を「オンニ(姉さん)」という親しみを込めた称号で呼ぶ元家政婦。
理解できないような、いや、現実って実はこういう妙なことあるよね、みたいな。泣いていいんだか笑っていいんだか、名前のつけられない感情に、予期せずふっと出会う映画、そんな感じ?
他人が書いた考察を見るより原作を100回あたれ、みたいなことを言う人もいそうな気がしますが、私は、(それは小学生までで)大人になったらむしろ先に答えを見ていい、いや、むしろどんどん見た方がいい、とすら思っています。
砲丸投げ(ハンマー投げだっけ?)のクダリを私は完全にスルーしていて、浸水する家でとーちゃんが持ち出したメダルがさっぱりハテナマーク。石の意味も考察動画を見て自分なりの答えが出たし。ほら、海外の作品って、もしかして現地の人にとっては別の解釈があるのかな、みたいな深読みして遠回りしちゃうことってありますからね。
5~6本考察動画を見たけど、いまだによく分からないのが、金持ち夫妻の夫婦仲。運転手ギテクが金持ちとーちゃんに「でも、奥様を愛してらっしゃるんですよね?」と尋ねるシーンが2回あったと思うのですが、どちらもイ・ソンギュンさんの表情が読み取れませんでした。PCの小さい画面で、さらに暗めだから、物理的なハンデのせいかな、映画館で観たらまた違っていたかもしれません。YESと即答しなかったことだけは確かでが、彼なりの愛はあるように思うのですけど。奥様は単純なうすっぺらいキャラですけど、そこが愛すべき良さでもあるわけで。
また何か思いついたら記事を書くかもしれません。
あ、そうそう、さっそく思いついた。この映画を公開前に、いちばん最初に見た観客、それはパク・ミョンフンのお父様だそうです。
ガンで余命が短いことを知った監督が、ミニシアターを借りて彼のために上映したそう。その後、視力を失ったそうなので、監督、グッジョブ!な美談なのですが…パク・ミョンフンさんって地下室男ですよ?
私は彼がめちゃくちゃ怖かったのですが…