文句なしで★5つ。
のちに「パラサイト 半地下の家族」のおとーちゃん役を演じる、ソン・ガンホさん主演の2013年の映画、ですけど、ガンホさん以外にもイム・シワン君やらイ・ソンミン氏やらキム・ヨンエさんやらイ・ジョンウンさんやら、キャストがめっちゃ豪華ですねー。
舞台は1980年代、軍事政権下の釜山。ソン・ガンホさん演じるウソクは弁護士。エリートではなく高卒で、歯を食いしばって弁護士になりました。そんなガッツは、弁護士になった後はなりをひそめ、土地の登記やら税金関係やら、プライドの高いエリートなら手をつけない雑魚案件で小金を稼ぎ、金銭的には成功していきます。
マンションも買って、さて、競技ヨットでオリンピックに出ようかななんて、夢物語に浸っていた折、苦節の時代にお世話になった食堂の息子(イム・シワン)が、アカ狩りの対象になったと知ります。無罪だと誰もが(検察や公安すらもが)思っているにも関わらず、です。時代背景として、見せしめが必要だったんですね…オソロシヤ。
国家権力に対抗しても勝てるわけがない…弁護側は始めから「刑量で勝負する」方針。ぼんやりと生きていたウソクでしたが、弁護士になる前の、「絶対に諦めない」精神に火がつきます。
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怖いのは、無実とわかって市民に罪を着せている公安警察が、国家のために正しいことをしていると信じているんですよね…身内がそんな目にあったらとても受け入れられないでしょうに。
村木厚子さんの事件を思い出すのですが、彼女が唯一泣いて抗議したのは、「どうせ執行猶予がつくんだから、あなたにとって大したことじゃないでしょう」と言われた時だそうです。無罪と執行猶予は、ぜんぜん違う。
この映画も、裁判が始まる前に弁護側と検事が「さて、落としどころはどうしましょうね」と廊下で会話するシーンがありますが、ウソクの表情が「そんな話し合いに加わるつもりは一切ない」と言わんばかりで、実際、裁判ではいきなり無罪を主張します。
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この映画は裁判の成り行きが一番の見どころではありますが、最後に観客は、別のテーマに気づくことでしょう。そう、これはウソクの成長物語でもあります。
余談ですが…
「パラサイト」で、どうしても手に入れたい家がありますよね。この映画、ウソクがどうしても「このマンションのこの部屋でなければ」という物件を手に入れようとします。その絡みで出演するのが「パラサイト」の家政婦役だったイ・ジョンウンさんです。