海外ドラマが好き♪

海外ドラマの感想ブログです。たまに脱線します。

【映画】海にかかる霧 ☆☆☆☆☆


Abema TVで無料だったので視聴してみました。
ユチョン主演の2015年の映画です。2001年のテチャン号事件を題材にしており、半分フィクション半分ドラマ、といったところです。

ユチョンは東方神起の元メンバーで(今は分裂してしまったJYJの方に属しています)、書くまでもありませんが正真正銘のアイドルです。これがアイドルの演技かっ!みたいなレビューが目につきますが、見始めから感想はその1点に集約されます。

まずは設定がアイドル映画の真逆。貧しい漁村が舞台で、全体を通じて暗いトーンです。
「貧しい」を通り越して「貧困にあえぐ」という方が適切で、衣食足りて礼節を知る、という言葉がありますが、村の貧しさがモラルを崩壊させるレベルまできています。
船長の妻は僅かなお金で簡単に浮気をし、船さえ勝手に担保に入れます。船長は妻を叱責する気力も既になく、羽振りの良かった時代への懐古からか、ボロ船への執着だけが異常なレベルまで高騰しています。船内という閉鎖空間での生活において、船員たちの性へのうっぷんは針がmax振り切れています。いつ何が起きてもおかしくない状態です。

そんな状況下に、中国に住む朝鮮族を密航させる話が舞い込みます。ちなみにこの朝鮮族たちの貧困レベルは船員たちのさらに下ですが、「家族のため」という目的が明白なためか、モラルの崩壊レベルは船員たちよりはるかにマシなように見えます。

船長は選択の余地もなく引き受けるのですが、なにゆえボロ船、検査官が乗り込んだ際に彼らを匿った魚のコンテナがガス漏れを起こし、全員が死亡してしまいます。

ここまでがフィクションの部分です。
以下がドラマ部分。

ユチョンはモラルの崩壊した村にあって唯一、正常な正義感を持つ(というか、まだ正義感が壊れていない)新人漁師です。珍しく学歴があり(それでも高卒)、祖母をいたわりながら生活しています。

密航者が船に乗り移る際、若い娘が海に転落してしまいます。果敢にも助けたユチョンは彼女に恋をし、温かい機関室に連れて行ってラーメンを食べさせます。事故が起きますが彼女だけが生き残り、船長の人道を外れた行いを目撃します。閉鎖空間の異常事態に船員たちもどんどんおかしくなっていく中、ユチョンは正常な判断で彼女と脱出劇を繰り広げるという…まぁここはドラマですね。



R15指定映画です。貧しさを表現するには性の崩壊を表現するのがが効率的な手法と認めざるを得ないので、私自身は必要なシーンだろうと思える範囲ですが、ダメな人はダメかも。

ユチョンに助けられた娘が機関室に行ったと聞いたおばさんが「良かったわね、韓国人と結婚できれば堂々と韓国に住める」というようなセリフを漏らします。密航も回を重ねてプロ級のおばさんにとっては、機関室に行く=船員と何かをする=朝鮮族の女性としてはエリートコース、なわけです。性的暴行を受けて怒ったり悲しんだりしているうちはまだ貧困の底が見えていないということでしょうか…

ユチョンはアイドルではありますが、どちらかというとイケメンというわけではなく、人懐っこい表情が人々を惹きつけているような気がします。素朴な田舎の青年を演じても全然嫌味がないのはそのせいでしょう。



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ラストシーンも、私はとても好きでした。☆5つ。

ですが、重ねて言いますが、ダメな人には受け付けられない映画かと思います。ユチョンと娘は、一応「恋をした」と私は解釈しましたが、ユチョンだって追い詰められて暴力を振るうシーンがあるし、その原動力は娘を独占しようとする自己中心的な性格とも解釈できる。人道を外れた船長の行いはみんなのため、ユチョンの行いは自分のためじゃないかと突っ込まれれば、何が正義かを説明するのは難しいと思います。なお、韓国ドラマを見ていてよく感じるのですが、ひいきする相手に好待遇をしたり、欲しい物を得るために人を押しのける度合いが、日本よりちょっと過剰な文化かなと思うので(良し悪しではなく文化の問題)、そこはちょっと差し引いてちょうどいいのかもしれない。

さておき、見方によって解釈にバラツキが生じる、いろいろ考えさせられるというのは、むしろ良い映画である証かと思うので、そういう意味でも☆5つにしました。