この回はよっぽど縁があるのか、それとも私のアンテナが反応するのか、数年おきにふと見かけては引き込まれ、そして感想を書きたくなる回です。
王妃は流産の後、ちっとも体調が回復しない。優秀な医女であるヨルイを差し置いて見習いでしかないチャングムは、捉えるのが難しいとされる散脈ではないかと見立てる。散脈は出産前に現れる脈で、もしそうだとすると双子の一人がまだ体内にいる可能性が出てくる。で、結論から言うとチャングムの見立て通りとなり、針治療にて王妃はみるみる回復する。昔、チャングムがスラッカンでも優秀だったことを思い出した王妃、チャングムが昔の競い合いで作った蕎麦粉のおつまみを夜食に食べたいと言い出す。クミョンの作った夜食を断り、結果、ヨルイだけでなくクミョンをも敵に回すことに。
大妃は大妃で老衰からくる体調不良。王との確執で(というか、チェ一族の陰謀で王と大妃は仲たがい)治療を拒む。チャングムは謎かけを出す。大妃が答えることができれば治療を拒んでいただいて結構、自身も重罪として罰を受ける。だがもし答えることができなければ治療を受ける、という賭けを持ちかける。この辺り、千夜一夜物語を彷彿とさせる。身分は低いが賢い女性の象徴である。その謎かけ、とある人物を当てるクイズで、その者は奴婢のようでもあり皆から尊敬される存在でもある。その者が健在なうちはこの世は安泰、だが居なくなると洪水に沈む、さてその者とは。
この答えは「母」である。宮廷中、答えがわかるものがおらず、皆が謎かけに夢中となる中、クミョンがふと答えに気づく。チェ尚宮に耳打ちし、大妃に答えが伝わる。しかし大妃は治療を受けると言い出す。答えが間違っていたのではない。この謎かけは、母が子を想う心、子が母を想う心を思い出させる謎かけとなっており、謎かけに正答してもしなくても、治療を受けようと大妃に思わせる仕掛けとなっているのである。
前後して、チャングムのことが心配でたまらないヨンセンが醤庫で祈りをささげるシーンが入る。醤庫は亡くなった、ヨンセンにとって母親代わりのチョン尚宮ゆかりの場所であり、ヨンセンを知る人物にとっては彼女がなぜそこで祈りを捧げるのか納得がいくのだが、知らない者にとっては奇妙な行動にしか映らない。側室でありながら王がさっぱり通ってこないヨンセンは、尚宮たちのもの笑いの種であるが、ヨンセンはそれはちっとも気にならない。しかし、王とすれ違った時、全く気づいてもらえず、さすがのヨンセンも凹む。
さて治療が始まるも、大妃は脚気に効く食材が全て嫌いで受け付けない。チャングムはヨンセンのキッチンを借りてこっそりと丸薬づくりをする。大妃が嫌いなニンニクと米糠の丸薬であるが、匂いは全くせず、お菓子のように食べやすいので大妃は進んで口にする。一方クミョンの献立には箸もつけない。
ヨンセンと楽しく丸薬づくりをするシーンは醤庫で祈りを捧げるシーンと並んで私の好きなシーンの一つである。
というような前段があっての、疫病パンデミック事件である。以前も書いたので略すが、チャングムは周囲から反感を買いまくっているので村の封鎖を教えてもらえず、疫病の村に一人取り残されることに。
今回視聴して新たに思ったのは、ヨルイやクミョンがチャングムを疎ましく思う気持ちはわかるが、その他の者たちもチャングムをのけ者にする恐ろしさである。
そんな中、ミン・ジョンホは(いつもは冷静な彼にしては珍しく取り乱して)チャングムを命がけで助けに来る。(まぁそれは恋愛ドラマなので当たり前として)、私が注目するのはまたしてもチョ・チボク。彼は双子流産事件の時もチャングムを庇う。ちょっと頭の弱いキャラとして周囲からはまともに相手にされておらず、集団イジメに加わらなくても誰も気にしないという不思議な立ち位置なのである。
あと今回改めて気づいたことは、チャングムが夜食を作るシーンである。久々に料理に腕を振るい、とても楽しそうなチャングム。一方、クミョンにしてみれば上手く作って当然の自分の任務である。ちっとも楽しそうでない上に、部外者であるチャングムが久々に作ったおつまみに負けてしまうのである。クミョンはチェ一族として生まれた時から運命が決まっており、いくら彼らの方針が間違っていようとも自分ではどうすることもできない。憧れのミン・ジョンホは柱の蔭から姿を見るだけでいいと思っていたのに、なんとチャングムと仲が良さそうである。敵キャラながらもやりきれない。クミョンは一体全体どうやって生きればいいのか。子供時代はよきお姉さんで、チャングムとヨンセンに松の実に松葉を挿すコツを伝授したりしていた。良心が残っているからよけいに辛そうなクミョンが可哀想だなと思った今回でした。