2002年のイ・ジョンヒャン監督作品。といっても、私は監督で選ぶほど映画に詳しくありません。私の目を引いたのは、ユ・スンホ。「会いたい」では微妙な悪役(?)でしたが、気味が悪いほど(誉め言葉です)イケメンでした。そんな彼の、子役時代の名作なのですね。2002年といえば「シュリ」とか「JSA」が続々公開された年。そんな中、低予算映画ながらさまざまな賞を受賞し、日本は岩波ホールで公開されています。
ざっとあらすじを。少年サンウは都会に住む悪ガキですが、どうやら母子家庭で生活がカツカツらしく、母の田舎に夏の間だけ預けられます。その「おばあちゃんの家」というのが結構強烈でして、「え、さすがにここは都会の子どもじゃなくてもキツイだろう…」という家。水も電気も通ってなさそうで、トイレはもちろん外です。ごはんはかまどで、薪で炊いています…
「がばいばあちゃん」が近いのではないでしょうか。貧しい家から預けられたおばあちゃんの家は、もっと貧しかったという。
水も電気もガスもない。まぁドラマだからそんな極端な設定にした?
いやいや、この作品は、サンウ以外は、なんと全員素人で、おばあちゃんを演じたキム・ウルブンさんが実際に住んでいた村が舞台なのだとか。
おばあちゃんと孫の交流で泣かせる映画は過去にいろいろあれど、その斜め上を行く映画作りに驚くばかり。
正直言うと私は素人の起用には懐疑的です。宮崎アニメも「紅の豚」の頃からでしょうか、重要な役に声優さんでなく、俳優さんを据えるシリーズが定着しましたけど、ずっと違和感を持っています。「風の谷のナウシカ」の出だし、「オームの道…」とナウシカが一言発しただけで今でも胸が震えます。やはりプロと素人はそれだけ違う、と私は思う。
だからこの映画も、思い切った起用で映画が破綻したのではないかと心配しましたけど、これは(私の知る限りで)唯一の成功事例かと思います。そもそもこのおばあちゃんのような人を女優さんから見つけてくるのは不可能でしょう。
もちろん工夫(?)はしてあって、おばあちゃんは耳は聞こえるけど言葉は喋れないという設定になっています。限られたジェスチャーのみでサンウとコミュニケーションを取るのですが、何を言いたいのかわからないことも多々。でもまぁ田舎のおばあちゃんは何を言っているのかさっぱりわからないことが多いけど(すみません…)、それでも日々は回っている、という感じがリアルと言えばリアル。
おばあちゃんの日常はミニマリズムの極致で、貨幣経済ではなく、人と人との支え合いで成り立っている模様。字も読めないけれど、乗るバスは周りの人が「それであってるよ」とか教えてくれる。お金が必要な時はかぼちゃを売りに行くんです。
とまぁそんな中に放り込まれたサンウ君。サンウがいくらわがままを言っても怒らないおばあちゃん。映画は淡々と進んでいき、まぁ特別面白くもないけど途中離脱するほどつまらなくもない、そんな感じかと思いきや、最後の10分ほどのところでいきなり涙腺のコックを全開にされて号泣してしまいました…その後も顔が腫れるほど泣きました。
といっても特に何があったというわけでもなく、まぁ予想通りの展開です(あまり過剰な期待をされると困るので言っておきます)。
そういえば昔、家に1冊だけドラえもんがあって、それに収録されていた「おばあちゃんの思い出」を読んだ時もこんな感じだったな。いきなり刺さる。
お母さんには賛否両論あるだろうけど、私は、お母さんだって良いお母さんだと思うなぁ。あの年ごろの男の子ってほんと大変だけど、ちゃんと愛情を注いでると私は見ました。
貧しい村が、最後には豊かな村に見えてくるから不思議。