たまたまAbemaTVで39話を放映中で、見てみたら私の好きな回だった。
チャングムには神回と呼べるストーリーが何回もあるんだけど、この39話と40話は、今見るとなかなか考えさせられるものがあります。
小さな村に疫病が流行り、村を封鎖するストーリーなんですね。
取り急ぎ武官と内医院からメンバーが選抜され、調査と治療に駆け付けますが、早々にパンデミックな状況だと判断。暗号の「鎖」という文字を村人にわからぬよう、伝聞していきます。村を封鎖して撤退せよ、という指令です。
チャングムはというと、その前の回で王妃様のお気に入りとなり、想像に難くないですが仲間からはすっかり嫌われてしまっています。出る杭は打たれるってやつです。で、ほんとひどい話ですが、嘘の情報を教えられ、封鎖された村に取り残されます。
逆境に強いチャングムですが、今回ばかりは悲しみに力が抜けてしまいます。取り残された事実とともに、同僚に裏切られた心の痛みに、呆然と柱にもたれるだけ。
そこへ現れたのがミン・ジョンホ。彼はチャングムを密かに慕っていますが、地位の高い武官であり、そして、「封鎖」の命を出した張本人なんですね。集合場所にチャングムがいないことに気づき、周囲の反対をよそに、村に引き返します。激昂した村人にフルボッコにされるのは明らかで、普段は冷静な彼が「それでも行かなくては」と取り乱す姿が珍しいシーンです。
力なく柱にもたれているチャングムを見つけ、ミン・ジョンホは「(封鎖は)正しいと思ったが、もっとよく検討すべきだった」みたいなことを言います。パンデミックが起きたらマジョリティ・ファーストの法則に従うのが国を治める立場の人間ですが、残されたマイノリティの中に自分の大事な人がいると知り、初めて貧しい民の一人一人の姿が見えてくる、そんなシーンです。
さて、力が抜けてしまったチャングム、珍しく泣き言を言います。今まで努力と我慢を重ねてきた。でももう無理。私がいったいどんな悪いことをしたというのですか…
それに対しミン・ジョンホは、「弱音を吐くあなたは嫌いです」。うわー、と思いました。我慢に我慢を重ねて限界がきた人に言っちゃうそれ?
でもまぁミン・ジョンホだって命がけで村に戻ってきてますからね…脱力されちゃっても困るのよ。それにですよ、平時は身分が違いすぎて愛情表現できないミン・ジョンホのこの発言は、「弱音を吐かないあなたが好きです」という、どさくさ紛れの告白にもなっているわけです。
まぁそれからいろいろありますが、ミン・ジョンホ、チャングム、そしてチャングムの師匠である医女のたった3人で、治療と原因究明を行います。村人に聞き取り調査をするうちに、どうも流行性ではないということがわかってきます。村人の飲み水、家畜、畑を調べ、そして、表面がぶよぶよになった大根を発見。疫病ではなく食中毒だと特定し、生姜汁を飲ませて病人はめきめきと回復。めでたしめでたし。。。生姜汁で回復かよっ!って思った視聴者、2500万人ぐらいいるのでは。まぁそこはドラマですからね。そういや「太陽を抱く月」にも似たようなシーンがあったなぁ。
そうそう、そこから先も見どころがあります。食中毒よりも疫病で片づけたい宮中の勢力は、食中毒説に耳を貸しません。ぶよぶよ大根の食中毒なんか今まで見たことも聞いたこともない、勝手に職務離脱した言い訳だろうと決めつけるチェ尚宮に、ミン・ジョンホの一言。「なら貴女が食べてみたらいい」
ミン・ジョンホは割と周囲と協調するキャラで尖った発言はあまりないので、これも珍しいシーンでした。
そしてですね、「私が食べる」と、表情ひとつ変えずに言い切るチェ尚宮もですねー、嫌な奴ながら肝が据わってて、感動すら覚えました(ちょっとだけですけど)。
最後に一言付け加えたいのは、(名前もわかんないけど)チャングムを慕うもう一人のキャラクター。彼は内医院の一員ですがあまり地位は高そうでなく、頭も良さそうではありません。空気も読めないのか、周りの全員がチャングムを糾弾する雰囲気なのに、「チャングムの言う通りでしたね」みたいな能天気発言をしばしば放ちますが、まぁ誰にも相手にされておらず、聞き流されます。(ちなみに、チャングムにも特に感謝されません)
私はこのキャラクターが面白いなと、見る度に思います。周囲と違う意見をちゃんと言うのがすごいし、しかもアホと思われているから反感も買わない。(今調べたら、チョ・チボクというキャラで、一応「人物関係図」に小さく載ってはいた。不出来な医官と説明がついていた…)
チャングムは、周囲と違う意見をちゃんと言うけど、めちゃくちゃ反感を買うんですよね。
ミン・ジョンホは、周囲と違う意見はめったなことでは言わない。慎重に調査を重ね、証拠集めをしている間に、チャングムが何とか自分の力で解決している。あれ?結局何もしてないのでは?
ちなみに、リアルに時代考証すると、奴婢の身分であるチャングムがミン・ジョンホと結ばれることは全く有り得ないそうです。チョ・チボクにしたところで高望み、という記事を昔どこかで見たことがあります。
こないだ見た、「天命」は、本当は優秀なのに事情があってアホなフリをしている医官をイ・ドンウクが演じてました。チョ・チボクを主人公にしたスピンオフだったらすごい面白いなぁ。
ちなみに、2019年の12月にも40話をつまみ食いして感想を書いています。
ダイヤモンド・プリンセス号に感染者がいて、みたいな話題が出始めてたけど、対岸の火事だと思っていたぐらいの時期かな。