海外ドラマが好き♪

海外ドラマの感想ブログです。たまに脱線します。

【映画】 バーニング 劇場版 ☆☆☆☆☆


村上春樹の初期の短編が好きで、原作の「納屋を焼く」は特に好きで、韓国ドラマが好きで、え、主演がユ・アイン!?ときたら、これは観るでしょう!

と、息巻いて2019年2月の公開が待ちきれないと思っていた2018年。

…気が付けばもう3月じゃん。

一般公開は終わってしまっていましたが、幸い単館上映されていたので、観てきました。

以下、ネタバレあり。
というか、私の解釈です。

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謎の金持ち青年、ベンがいわゆる「青ひげ」で、女の子に一時の夢を見せて、飽きたら殺害、を繰り返している異常犯罪者と、私は解釈したのですが、某映画サイトのレビューをざっと一読して仰天。私の解釈は偏っているようです。



「ベン=青ひげ」は状況証拠のみ。主人公ジョンスがヘミを想うあまり妄想にとりつかれていったのだ。映画の後半は彼の妄想の世界、異常なのはジョンスの方、という解釈が主流だなんて〜。



ヘミというのは主人公の幼馴染で、中身のうすっぺらい女の子です(と、私は思った)。
が、これもジョンスのファム・ファタール(運命の女)という解釈が結構あります(当然男性のレビューですよ)。
えぇー。



男性は男性に厳しく、女性は女性に厳しい、ということなんでしょうね。

番外編としましては、
鳴り続ける電話について、ヘミが7歳の時に落ちた枯れ井戸から時空を超えて助けを求めている、なんて解釈をしたレビューがありました(これは女性)。
ぜんぜん思いつかなかった。



多かったのは、韓国の行き過ぎた格差社会が表現されていたというレビュー。

賛同はしますが、むしろ、格差社会に惑わされず、自分のペースで生きる主人公像を感じたなぁ、私は。
村上作品の主人公はこうあるべき、という先入観があるせいかな。

村上作品の主人公は、たくさん稼いだり地位を確立することに興味が持てず、淡々と自炊をし、ランニングや水泳で身体を整え、ローコストな生活を規則正しく回すスタイルが特徴です。
社会との関わりは最小限となり、世間の物差しで計られることを回避できます。

映画の中のジョンスも自炊をし(ちゃんとニンニクを潰してましたねぇ)、のちにランニングをすることになります。ジョンスは世間の物差しに振り回されてなんかいない、最後までクリアな精神を保っている、と私は解釈しますがねぇ。
一般的に男性はジョンスに厳しくて、「あいつはおかしい」となりがちなようですが、私(女性)はジョンスに甘いです。

一方、私(女性)はヘミには厳しいです。中身が空っぽでスタイルの良さだけが売り。イベントコンパニオンで貯めたお金をアフリカ旅行につぎ込み、そこで何かを得て来るならまだしも、男連れで帰ってきただけ。しかも金持ちで怪しさ満点じゃん。
そしてベンはそういう女の子が好きで、決まって2ヶ月で飽きます。

ヘミがアフリカで見た踊りを、ベンのホームパーティで披露するシーンがあります。踊りというか、「このポーズにはこういう意味があって、この意味のポーズに発展していって…」と説明しながら体を動かす、と言った方が正確なのですが、ベンがそのシーンでいかにも退屈そうなあくびをします。

観客側も「踊りの意味」をヘミから聞くのは2回目でして、あぁ、なんてうすっぺらい女の子なんだろうと思う、という上手な仕掛け…だと私は思ったのですが、この踊りが男性陣を刺激してファム・ファタール説が誘導されるらしい。
「はぁ?」って感じなんですけど。
ヘミが千夜一夜物語の女性ぐらい賢かったら殺されずに済んだと思いますがねぇ。

とはいえ、ヘミがうすっぺらいというだけの罪で殺されていいわけはありません。彼女としたって、パッとしない農村で生まれ、顔はそんなに良くなく(のちに整形)、抜群のスタイルが売りなのですから、いったい他にどうすれば良かったというのでしょう。全財産をつぎ込んだ旅行で得たものが別世界への切符だったとしたら、あまりにも可哀想すぎます。そういう意味ではヘミの味方です。

映画の中ではジョンスだけがヘミの味方です。母親や姉すらヘミを心配しません。世間が「青ひげ」を制裁できないとなると彼の取るべき行動は…

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さて、映画の問題ではなく、こちらは日本語字幕の問題。読みやすい字幕だったのですが、気になった点が1つあります。

原作では、「僕は時々納屋を燃やすんです」という金持ち青年の衝撃発言が、ぼーっとしている主人公の耳にいきなり入ってきます。一瞬何を言われているのかわからない主人公。ここが物語の一番のキモであり、印象的な手法で描写されています。

僕 燃やす 納屋を

という3つの要素がいっぺんに目に飛び込むことで読者に衝撃を与えられると思うんです。

さて、映画の字幕はこんな感じです。





「僕は時々」と、「ビニールハウスを燃やしています」が分割してしまっています。

この部分はぜひ、「僕は時々ビニールハウスを燃やしています」と、一気にカタをつけて欲しかった。で、そのあとジョンスの「!?」という顔がクローズアップされる、という流れで。

私は韓国語はわかりませんが、雰囲気からしてセリフとカメラカットは原作通りなんじゃないかな。わかりませんが。

「納屋を焼く」の重要シーンだし、そこは死守して欲しかったなぁ。文字数の関係とかですかね。字幕は超難しいらしいですしね。でも全般的にとても良い字幕でした。

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※追記※

2021年、AbemaTVで無料公開されていたので再度視聴しました。

くだんの箇所は

  1. 「僕は時々 ビニールハウスを」
  2. 「何て?」(←ジョンスの驚いた顔)
  3. 「時々 燃やしてます」

となっていました。

恐らく、2のジョンスの顔から判断するに、1で「僕は時々ビニールハウスを燃やしています」という一続きのセリフを言ってしまっていると思われます。それゆえのジョンスの驚きですから。

つまり、原作に忠実であると想像します。そしてこのAbemaTVの字幕は、長すぎるセリフのうち、「僕」と「ビニールハウス」を一緒に視聴者に見せることを選択したのだと思います。

 

この箇所は何と言っても短編のキモになる部分で、原作では改行が不思議な感じに工夫され、主人公の驚きを読者が一緒に体験できるようになっています。